前回(20話)のあらすじは・・・
京花の決死の攻撃で、「SKALL」のリーダー・サイを気絶させることに成功し、エイジの危機を救った京花。
二人は脱出を試みる。
【親愛なる僕へ殺意をこめて】第21話のネタバレ&感想
脱出へ
エイジは京花に肩を支えられ、立ち上がった。
逃亡のために必要な車の鍵は、気絶したサイが所持していることを思い出し、起こさないよう恐る恐るサイの懐を探って入手する。
サイはまだ息があるようだったが、深く昏倒している様子で、暫くは意識を取り戻さないだろうとエイジは判断した。
逃げ延びるために車に乗り込んだ二人だったが、自分が当たり前のように運転する側になっていることを訝しむ京花。
エイジは運転免許を持っていないが、実は京花の方もペーパードライバーだった。京花に運転を託さなければならない状況に、ごめん、とエイジは小さく詫びる。
ハンドルを握り、車の運転方法を思い出そうとしている京花を見守っていたエイジは、彼女の右掌に、傷の手当てをしたと思しき布が巻かれていることに気付く。
その手の傷は、逃げ出すときについたのか。問い掛けたエイジに、京花は「別になんでもないよ 大丈夫!」と手を見せながら明るく笑ってみせた。
しかしそうやって事実を語らず、明るく振る舞ってはぐらかすこと自体が、エイジの問いの答えを裏付けているようなものだった。
俯き、硬い表情で謝罪するエイジ。
京花を助けるつもりが逆に助けられ、傷まで負わせてしまった。己の情けなさを痛感するエイジだったが、ふいに妙な物音が鼓膜を掠める。
背面に目をやるが、リアガラスの向こうには鬱蒼と森の陰が見えるばかりで、特に変わった様子はない。
サイ
気のせいかと思った次の瞬間―――
フロントガラスに、目をかっぴ開き、舌を出した禿頭の男――いつのまにか意識を取り戻していたサイの禍々しい笑顔が張り付き、「ばあっ」と声をあげ、二人を威嚇した。
突如、暗闇の中から襲撃を受ける恐怖。
誰のものとも分からぬ悲鳴が車内で上がる。
パニック状態のまま京花がアクセルを踏む。
事故
車は猛烈な勢いで走り出したが、すぐに近場の樹に正面衝突し、凄まじい音を立ててひしゃげた車は動かなくなった。
膨らむエアバッグ。衝突の衝撃からか、エイジの片目からは血が流れていた。エアバッグに顔を埋めて動かない運転席の京花、彼女の頭を支えるエアバックには明らかに血がしみ込んでいる。クラクションは鳴り続ける。
エイジは京花の名を呼ぼうとしたが、それよりも早く、エイジの座席横のドアガラスが叩き割られた。
ぬっと突っ込まれた刺青だらけの腕が、エイジの首にベルトを引っ掛け、そのまま車から引きずり出す。
首にベルトを巻かれ、ベルト部分を背負うように引っ張りあげることで、サイに頸部を圧迫されるエイジ。
エイジはもがき足をバタつかせたが、サイの圧倒的な腕力を前にしてどうすることもできない。
「5分 それが君の人生の残り時間だ」
エイジの首をベルトで絞めあげ、不気味に笑ってサイは言う。
動かなくなったエイジ
抵抗虚しく、エイジは窒息しかけていた。
負傷した顔を歪め、足をバタつかせる間に、車の中に残された京花と目が合う。
額から血を流し、エアバッグに凭れて身動きが取れない京花が、小さくエイジの名を呼びながら、首を絞められているエイジに向かって手を伸ばす。
エイジは京花ちゃん、と呼ぼうとしたが、声は殆ど届かなかった。
やがて、エイジは動かなくなり、サイの背にだらりと垂れ下がった。
絶望から希望へ
―――しかし、エイジは死んではいなかった。
息絶えたかと思われたエイジだったが、サイの背中で、おれのかちだ、と息も絶え絶えに勝利を宣言する。
あまりにも荒唐無稽な発言に、それが最期の言葉かとサイは呆れ笑う。
ところが、徐々に近付いてくる音に気がつくと、サイの表情は変わった。
接近してくるのは、警察のサイレン音だった。
驚愕に目を見開き、エイジを地面に取り落とすサイ。何故この場所に警察がやって来たのか、動揺を口に出して顔を歪めるサイに、エイジは地に伏せながらも堪えきれず笑い声を漏らす。
エイジは絞殺されかけた影響で、両目からは涙があふれ、口からは唾液を零した無様な状態だったが、その表情は決定的にサイを嘲っていた。
「それが最期の言葉かよ?」
言われた言葉をそっくり返してエイジは笑う。
数台のパトカーが赤色灯を回転させ、彼らの眼前に辿り着いた。
【親愛なる僕へ殺意をこめて】第22話のネタバレ&感想
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