前回(8話)のあらすじは・・・
九度の特効命令から生還を果たしたといわれる元陸軍特別攻撃隊「万朶隊」隊員、佐々木友次と札幌の病院で話している。
不死身の特攻兵第9話のネタバレ&あらすじ
札幌の病院
フィリピンの特攻で2度死んでいるはずの男に、
フィリピンで一体があったのかと問う。
言葉でしか伝えられないこともある―――自分はそう思っている。
目の前で病院のベッドに横たわる老人は、佐々木友次だ。
鴻上さん、言葉では伝えられないこともあるんですよ、
と言いながら体を起こす。
「私はただフィリピンに行って帰ってきただけです」
行って帰ってきただけ?そんなわけない、と思わず否定した。
はあ、それでもフィリピンでも楽しいこともあったんですよ‥と戦地での思い出を語り始めた。
1994年(昭和19年)10月25日
"海軍特別攻撃隊"が出撃した夜、佐々木らは
軍の宿舎でなく台湾の旅館に案内されていた。
風呂上り、部屋に戻る一同。
!?
目の前に豪華な、まるで上官の食事が並んでいた。
全員愕然とする。
「女将‥‥これは"上官の食事"と間違えてないか?」
いいえ!お偉いさま方もあちらで同じものを召し上がっていますよ?と女将が言う。
並んでいるのはすき焼きだった。マンゴーまである。
お偉いさま方には内緒でございますわよ、と女将が笑っている。
一人、冷や汗をかいて立ち尽くす男がいた。
尋ねると、これを食べると後戻りできなるような気がして‥‥
と言う。場が凍った。
鍋のグツグツとした音。
その中一人もしゃもしゃと食べる佐々木。
「甘い!こんな甘いモノ初めて食べた!!」
皆さんも食べたほうがいいですよ!?
絶対‥‥と続ける。
すると、みんな割り切ったようにバクバクとすき焼きを食べ始めた。
俺は食うぞ!内地だってこんないいモン食えるかってんだ!!と奮いたてながら。
台湾で食べたマンゴーの味は今でも忘れはしません。
あの時ばかりは皆大喜びで騒いでましたよ‥‥
翌10月26日
鵜沢軍曹の機体が故障して出発がまた延期になった。
修理は夕方になっても終わらず‥‥
日没前に鵜沢軍曹と整備士2人を残し
隊はフィリピンへと向かった。
ガチャガチャ
整備士の野村が鵜沢軍曹の機体を修理し終えた。
「鵜沢軍曹!!直りましたよ!これで飛べます!!」
鵜沢軍曹!?と呼びかける。
しかし。
「‥‥‥俺は‥‥ フィリピンへは行かん‥‥」
ちょっと待ってください!と整備班は慌てる。
やはり自分で壊していたんだな、なんて人だ!と非難する。
どういうつもりなんですか!!と肩をつかむ。
見ると涙をため、
「行きたくないんだよ‥‥」
と振り絞るように言う。
皆呆然としながらも、行きましょうフィリピンへ‥と促す。
このままでは仲間を見殺しにすることになるのだ。
ではお前たちはフィリピンに行ったら俺と一緒に死んでくれるのか?
鵜沢軍曹は畳みかける。
俺が悪いのか?民間の養成学校の入ったのに無理やり軍に入れられて。
生きて帰ったらいけないのか?
「生きたいって思うことが‥‥そんなに悪いことなのかッ‥‥!!」
ショックで唖然とする野村の肩をつかみ
強く強く訴える。
そして自分に言い聞かせるように
俺は死なん、死んでなんかたまるか。と
言いながら機体に乗り込む。
だが、このまま内地に引き返すと、
最悪"逃亡罪"で銃殺になる。
そんな事はわかっている、俺だって莫迦(ばか)じゃない
「"正当な方法"で帰らせてもらうんだよ!
"死なない程度"でな」
それって‥まさか‥
整備士たちが顔を青くする。
妻と撮った写真を取り出す鵜沢軍曹。
「待ってろよ‥絹子‥‥」
必ず‥‥お前のもとに生きて帰るからな!!
戦争の始まり
昨日食べたマンゴー美味しかったな、と佐々木はよだれを垂らしながら
空を飛んでいる。
その下には見覚えのある地形があった。
そうだ。教科書でみた‥‥
「バシー海峡だ!!」
凄い!凄いや!!と興奮する。
という事はこの先は‥‥
「こんにちは フィリピンさん
キミと会うのが僕の夢だったんだよ‥‥」
その時ばかりは特攻のことなどすっかり忘れて大喜びしていましたよ‥‥
と老人・佐々木友次は語る。
今自分がいる"領域"が‥すでにアメリカ軍の
"領空権"に入っていることも知らずにね‥‥
それからが‥‥
私たちの戦争の始まりでした‥‥
【特攻まであと17日】
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